最近読んだ本「明日の子供たち」
有川浩さんの「明日の子供たち」を読んだ。
- 作者: 有川浩
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2014/08/08
- メディア: 単行本
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下駄箱からはみ出し散らかった子供たちの靴を片付けようとして、先輩職員に咎められる主人公の青年。元どおりの散らかった状態に戻す先輩に「ちょっとくらい優しくしてあげてもいいじゃないですか。かわいそうな子達なんだから」と食ってかかる正義漢は、「90人の子供を毎日、〝ちょっとくらい〟優しくしてあげられるわけ?」と冷や水を浴びせられる。
養護施設に入っている子=親と一緒に暮らせない子=かわいそうな子という、私の中にある先入観を、荒っぽい外科手術で摘出してぽん、と目の前に見せられたみたいな、気まずさに襲われる。
「かわいそう」という言葉が昔から嫌いだった。近所のおばちゃんが、同級生の障害のある友達を見て「かわいそうにね」と言ったりするたびに猛烈に反発した。でも、その時はうまいこと自分の反発が何故生じるのかを説明できず、ただの時々癇癪を起こす子供に思われていた。
この本を読んだ今ならちゃんと説明できる。それを口にした瞬間に、言う側と言われた側に上下差が生じる気がする。恵まれないあなたに対しての、恵まれた私という構図。
「こんなに恵まれない立場の人が世の中にいて、その人たちを認識して同情してあげられる私って、エライ」感が透けて見える気がする。
この本の中に出てくる施設の女の子も「かわいそう」という言葉に異様に反応する。「施設にいるからって、かわいそうって思われたくない」と彼女は言う。確かに自分に置き換えて考えてみたら、住んでる場所や環境だけでかわいそう認定されるのは心外だ。かわいそうは不幸に置き換えられるのかもしれないけど、私が幸せか不幸せかは、自分で決めることだ。知らない誰かに、「あなたは不幸」と決めつけられたくはない。
と、書くと、憤りに満ちた本に思えるかもしれないが、さにあらず。この本に出てくる世間的にはカワイソー(棒読み)な子供たちは、それぞれ個性を持ちながらも、自分なりのアプローチで逞しく社会の荒波に立ち向かおうとする。その姿があまりにも爽やかであまりにもまぶしい。
有川さんの本でいつも「待ってました!」と言いたくなる、カタルシスを感じるシーンもちゃんと盛り込まれていて、読んでいて胸が熱くなる。
ともすればどんよりしがちな社会的なテーマを、茶化すことなく真正面から描いているのに、エンターテイメント小説として完成させるその手腕に感服の一冊だった。