銭湯に見る大阪という都市

出張で大阪に行った。

私は関東圏内で生まれ育ち、東北で過ごしたこともあるが、西の方にはあんまりご縁がない。住んだことない。

九州ももちろん数回行ったことはあるけど、数える程度。

そんな中で不思議だなーと思ったのは、大阪という街に行くと何故か緊張するという事実。なんというか、日本語通じるけど海外旅行に来てるみたいな、文化も人のメンタリティもエスカレーターの空ける位置も何もかも違う前提でここにいる、って感じの緊張感。不思議なことに京都でこんな緊張感はなかった。私だけだろうか。

私は銭湯が好きなので、旅先の銭湯を訪ねることが多い。今回も行った。清水湯という、心斎橋のど真ん中にあるビル型銭湯。大阪の人曰く、「クラブ帰りの若者が早朝集う銭湯」。東京では早朝から開いている銭湯は稀なので、もの珍しい。

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一軒しか行ってないけど、大阪の銭湯で関東と違うなって思った点を挙げてみる。

浴室内にテレビがある

サウナの中にもテレビ画面は埋め込まれていたが、浴室の、浴槽に浸かった位置から真ん前の壁の高いところに大画面のテレビが埋め込まれていた。音はない。

掃除のおばちゃんが常にいる

服を着たままのおばちゃんがウロウロしてて、何してんのかなと思ったら掃除していた。排水溝のゴミや髪の毛を取り、置きっ放しになってる洗面器や椅子を定位置に戻していた。

私が頭洗ってる横にぴったりくっついて髪の毛をあさられるのは、昔風に言えば立ち読みしてる本屋ですぐ隣ではたきをかけられるみたいな違和感があったが、おばちゃんのおかげで清潔感はハンパなかった。

浴槽の形状が異なる

関西の銭湯は、浴槽のへりに腰掛けるための段が付いていることが多い。これは、入浴のフローが関東と関西で異なるからだと習った。

大まかに言うと関東では、

入店→まず洗い場で頭と身体を洗う→浴槽でお湯に浸かる

に対し、関西では

入店→浴槽の横で掛け湯をして、すぐお湯に浸かる→からだがあったまったところで身体を洗う

という習慣の違いがあるからだ。そのため、腰掛けて掛け湯をしやすいように段が付いている。

また、洗面器も掛け湯がしやすい&浴槽のお湯の減りが早くならないように、洗面器も関東に比べてやや小ぶりなのである。(銭湯トリビアでした)

ただ、家庭でどうやって入浴を教えられたかによっても変わってくるので、関西の人が全員身体を洗う前にお湯に浸かるかはわからない。同じく、東京の銭湯でも、時々掛け湯をしただけでまずお湯に浸かる人もいるし。

脱衣所に灰皿がある

これは東京でもあるのかもしれないけど、私が行ったことある銭湯はこのご時世を反映してみんな禁煙が徹底していて、タバコを吸うなら外だった。

値段がちょっと安い

東京では460円(2015年2月現在)、大阪では440円。20円安い。ただし、サウナは別料金だった。

総合して、大阪で行ったこの清水湯はあまり会話もなく、淡々と入浴して帰って行く人が多かった。昔池袋に住んでいた時に通っていた銭湯に似ている。都会的な感じ。

個人的にはこの殺伐とした空気は嫌いじゃなくてむしろ好きだ。中にいる人のトーンが、例えば電車のなかの乗客とか、コンビニのレジに並んでる人みたいな、わりとツンとした感じで思い切り公共の場なのに、考えられる限り最もプライベートな格好である全裸というのは考えてみるもとてもユーモラスだなあと思うからだ。

お湯を弾くようなピチピチ肌の若い子も、しっとりやわらか羽二重餅みたいなお肌の、年齢を重ねたご婦人も、服を脱げばみんな大きくはおんなじだなあと思わせてくれる。

関東でも関西でも、多少のルールは違えど大きいお風呂は気持ちいい、ということを発見して、白ばらコーヒー牛乳を飲みながらホテルに帰った。