月に向かって祈る
今はただ、悲しみで涙するのみです。
しかし、その悲しみが「憎悪の連鎖」となってはならないと信じます。
このお母さんの最初の記者会見の言葉は違和感の連続だったが、今回は素直に入ってきた。
実の息子が殺されたと知った直後の言葉としたら、ものすごく冷静なトーンだなとは思う。自分の肉親や、愛する人がいわれなく惨殺された直後だったとしたら、同じことを言えるかどうかはまったく自信がない。
でも、確かに真理を突いた言葉だと私は思う。
昔観た映画のなかに、今でも忘れられないセリフがある。
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ネオナチ的な思想の狂信的な集団のリーダーとなった白人青年をエドワード・ノートンが演じる。
ある事件で刑務所に入ることになったその青年が、刑務所の中で聞くセリフがそれだ。
怒りは、君をしあわせにしたか?Has anything you've done made your life better?
人間は何のために生きているのか?
それは個人によって違うというのは分かっている。でも、究極のところ、人間はみな、しあわせになるために生きているんじゃないのかなと思う。何かの目的のために何らかの状況を我慢するとか、耐えるとかはあっても、自ら不幸に生きることを望む人はいないのではないかな。
もししあわせに生きることを皆が望んでいるとするならば、憎しみという感情はしあわせに近づくためには、目隠しにこそなれ、手助けにはならないんじゃないだろうか。
この世に、死んだほうがいいなんて人はいないと、私は思う。誰かがしあわせになるために、他の誰かが命を落とす必要があるとは、何回考えても、どうしても思えない。
私にできることは限られているので、せめて後藤健二さんの報道が虚偽であるよう、もし真実としたら彼の魂と家族が穏やかであるよう、寝る前に月に向かって祈ろうと思う。