こないだ観た映画『俳優 亀岡拓次』

『俳優 亀岡拓次』を観た。

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安田顕主演の邦画。「水曜どうでしょう」に出ていた頃のヤスケンはいじられ放題のキャラクターだったから、その時代を知る者からすると隔世の感がある。
これを見てげらげら笑っていた頃は、まさかヤスケンが映画の主役を務める日が来るなんて思わなかった。

でも主役を演じるようになっても、ヤスケン節は変わらない。どこか情けなくてカッコ悪くて、でも無理に自分を盛ったりせず「ま、自分、こんなんすから」と諦念にも似た感じで何とも脱力感漂うカッコ悪キャラが、一周回ってカッコいい。もしかしたらリアルではめっちゃイケメンキャラなのかもしれないけど、スクリーンの外のことはまあ、どうでもいい。

この映画を一言でいうと

「どこかで見たことある顔だけど、名前を思い出せない」俳優、亀岡拓次がありとあらゆる役柄を演じる日常を、たっぷりのペーソスと、少々のファンタジーで描いた映画。

こんな人におすすめ

チャップリン映画が好きな人は、この映画は割と受け入れられるんじゃないかと思う。たぶん、30代後半の、ある程度人生経験を積んできて、自分の限界を悟ったり、あるいは夢をあきらめきれなかったりする人間のはらわたにグッとくる映画。

個人的感想

ままならない人生を、それでも腐らずに肩の力を抜いて受け入れる。

「人生色々あるけど、ま、そんな悪いことばっかではないはず、だよ、ね?」という達観した楽天性が、観る者の人生に対する漠とした不安を和らげ、笑顔にさせてくれる。

37歳独身。いつまで経っても主役をもらえないで年ばかり重ねていく。でも、やっぱり演じることが好きだから諦めきれない。ま、他にできることもないし。

いいんだ俺は演技の仕事さえもらえれば。と開き直っているようでいて、減ってきた仕事に不安を感じて今まで受けていなかった芝居の仕事を受けたり、小市民的にあがく亀岡拓次の姿が情けなくも愛おしい。

別に世の中を変えるみたいな大それたことをしたいわけじゃない。でも、せっかくの人生、自分の納得できる自分なりの「面白きこと」をしてみようじゃないか、という心意気を感じられて、観ていて笑いながら背筋が伸びる映画だった。

びっくり人間ヤスケン、やっぱり好きだなあ。