昨日観た映画『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』

(ややネタバレです)

今をときめくベネディクト・カンバーバッチである。

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私の知る限り、鈴木杏樹に並んで世界に誇る蛇顏である。一度見たら忘れない。セールスマン向きの顔である。客先でも「担当のカンバーバッチさん?あー、爬虫類っぽい顔の人でしょ?」とすぐ覚えてもらえる。それが営業成績に結びつくかは本人次第だけど。


この作品を一言でいうと

実話に基づく、第二次世界大戦中の歴史の間に葬られたひとりの天才数学者が成し遂げたドイツ軍の解読不能と言われた暗号文を解読するという偉業と、彼の孤独。


こんな人におすすめ

ベネディクト・カンバーバッチのファンは満足できる内容だと思う。彼が演じた主役のアラン・チューリング氏はイギリスの寄宿学校出身の同性愛者。時代背景は同性愛が世間に認められ始めるずっと前の第二次世界大戦の話で、同性愛が判明したらわいせつ罪で逮捕される時代だった。秘密と背徳と絶望と孤独。彼のファンが好む属性とわりと重なっていると、私は思う。


カンバーバッチ、自分の世間的ポジショニングや、自分が求められてる役どころをよく理解してるなあ。地頭のいい人なんだろうな。

個人的感想

私は同性愛者の歴史にとんと疎いので、第二次世界大戦中には同性愛者が同性愛者というだけで逮捕される時代だったことに驚いた。だって、たかだか60年とか70年前ですよ。


最近渋谷区で同性愛者同士の結婚が公的に認められたニュースを見て、「今頃かい」と思ったばかりだったので、驚きは更に倍。


どちらかというと個人的には、時代背景に虐げられた同性愛者としての数学者のアイデンティティよりも、ひとりの人間として自分の好きなものにとことん没頭するという行為の純粋な美しさや、どんなに天才と言われる人間であっても、ひとりで成し遂げられることの限界と、ストーリーの肝となる暗号の解読への手がかりが、仲間とのふとした会話から生まれるブレイクスルーが、観ていてグッとくるところだった。


主役のアランは、私が見た限りではいわゆるアスペルガー障害者(現在では自閉症スペクトラム)として描かれていて、人との会話で行間を読めないため、ジョークが理解できなかったり、言葉の裏を捉えられずに相対する人にとても感じ悪い受け答えをしたりする。当たり前だが、もちろん本人に悪気はない。


そんな風だから寄宿学校でもいじめられ、孤独だった彼が、唯一仲良くしてくれた男子生徒が読んでいた本から暗号について知り、会話の行間は読み取れなくとも暗号に隠されたルールを読み解けさえすれば、暗号が解読できるようになるという事実に興奮するシーンがとても印象的だった。


彼にとって、日常生活での会話のやり取りよりも、法則とルールがあり、それに基づいて読めば誰にでも理解できる暗号の方が、ずっと簡単だったにちがいない。


現実世界と暗号世界の狭間で、生きる道を探して彷徨い続けたひとりの男の成し遂げた偉業が、戦時中の機密に関わることなので長らく公にされず、彼の評価も死後大分経ってから、というのも皮肉な話だと思う。でも、彼がきっと生きていたとしても、世間から評価されるかどうかなんて、鼻くそほども気にしないに違いない。


自分にとって何が一番大切かをわかっている人は、時として想像もできないようなすごいことをやってのけるんだな、と思った。

<公式>映画『イミテーション・ゲーム / エニグマと天才数学者の秘密』オフィシャルサイト|大ヒット上映中