クッションことば


人とのコミュニケーションには、テレパシーを使える人以外は言葉を介することが圧倒的に多いです。

世の男性は「いちいち好きって言わないと伝わらないのかよ」と舌打ちしたりする人もいるそうですが、お答えします。伝わりません。当たり前です。

また、ある人は「言葉に出して言ってくれないと、何を考えてるか伝わらない」と仰る人もいますが、お答えします。それは、あなたには伝えたくないという意思を沈黙で示しているのです。そこは察しろよ。

しかしながら、言語は手段としては二次的なものなので、本人の言語能力の差も加わり、本来伝えたかったことと伝えたことにギャップが生じることがままあります。

これを人間は表情やジェスチャーを含むノンバーバルコミュニケーションで補完するわけですが、従ってメールなどのバーバルコミュニケーションのみに依る手段は、誤解される可能性がグンとアップします。

これを避けるために、言いたいことを言いたいトーンまで和らげたり、少なくとも相手を激高させない程度まで言葉の鋭利さを落とすために加える言葉のことを、クッションことばと呼びます。(私だけですが)

私が最近人の会話を聞いて面白いな、と思ったクッション言葉をご紹介します。
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「いい意味で」
相手に対してやんわり指摘したいことがあるけど、これを言ったらカチンとくるかな、という時、これを語尾につけると、何だかけなされてるのか褒められてるのか分からない気がしてきませんか?で、戸惑ってる内に指摘は完了。ミッションコンプリート。

例「もー、ほんとにいちいちめんどくさいんだけど。いい意味で」
「その香水、どうかと思う。いい意味で」


「色々と」
説明すると長くなるけど、説明するのがめんどくさいし、第一その説明の内容が会話には全く重要じゃないと言う時に使うクッションことばです。

例「忙しいんだよねー。色々と」
「人間なんだからそりゃ、あるよ、色々と」


「年かな」
これは、自分に対してのみ使うクッションことばです。自分の発言があまりに自虐的過ぎるきらいがある時に付け加えると、小さな笑い(あくまで小さな)に転換できます。使い過ぎると「あの人年齢の話ばかりして、絡みづらい」と評され、単なるウザい人になるので、使用頻度はほどほどに。自分以外の誰かが、この言葉をやたら使うところを想定していただければ、絡みづらさは容易に想像できると思います。年のせいばかりにしてるひとって、「そうですね、明らかに加齢ですね」とも言えないし、かと言って「そんなことないですよ、まだまだお若いです」と言うのも歯が浮くし、どうコメントを返していいか困りますよね。

例「物忘れがひどくてさー。年かな」
「朝の支度にやたら時間がかかるようになって。年かな」
「どうしても痩せられないんだよね。年かな」

言うまでもないことですが、このことばは自分以外の人に使うと、それこそ色々と大変なことになるのでご注意ください。
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かように日常会話を和らげる低反発枕のようなことばは多数存在し、思わぬ誤解や二者間の不要な諍いを避けてくれます。

人間関係を円滑にするクッション言葉は他にも多くあるはずです。これからしばらく、クッション言葉研究家を気取ろうかと思っています。